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新会社法Q&A

新しい機関設計

「株式譲渡制限会社」とは何ですか。

「株式譲渡制限会社」とは全ての株式の譲渡を制限している株式会社のことです。これまでの商法は、非公開・中小企業は有限会社、公開・大会社は株式会社という制度を選択することを想定していましたが、実際には、株式会社の方が信用力に長けているとのイメージから、小規模企業でも株式会社の形態を選択することが多く、実質的な差がなくなっていました。新会社法では、有限会社制度を廃止し、株式譲渡制限会社であるかどうかを制度設計の新たな基準としています。
株式譲渡制限会社といえるためには、全ての株式の譲渡につき、会社の承認人を必要とする旨の定めを、定款におく必要があります。
「会社の承認」とは、原則として取締役会における承認を指しますが、定款で別段の定めをおくこともできます。取締役会を設置しないことも可能なので、その場合の承認機関は株主総会になります。
株式譲渡制限の定めを定款におくためには、株主総会の特殊決議(議決権を有する株主の半分以上、かつ当該株主の議決権の2/3以上の賛成)が必要です。

新会社法では、株式会社の機関をどのように設計すればよいのですか。

株式譲渡制限会社では、取締役会および監査役の設置が任意になり、取締役を1人のみにすることもできます。
(1) 株主総会:全ての株式会社で必ず設置
(2) 取締役:全ての株式会社で最低1人必要。取締役会設置会社では3人以上
(3) 取締役会:株式譲渡制限会社では、設置は任意。それ以外の株式会社では必ず設置
(4) 監査役:株式譲渡制限会社では、設置は任意。ただし、取締役会を設置する会社では原則設置
(5) 監査役会:大会社(株式譲渡制限会社、委員会設置会社を除く)では必ず設置。取締役会を設置しない場合には、設置できない
(6) 委員会:監査役を設置する会社や、会計監査人を設置しない会社は設置できない
(7) 会計監査人:大会社では必ず設置。大会社以外の会社では任意設置
(8) 会計参与:全ての株式会社で設置は任意。大会社以外の株式譲渡制限会社が取締役会を設置する場合、会計参与を設置することで監査役に代えることができる

■ 中小株式会社の機関設計のパターン例 ■









(1)
株主総会 取締役
(2) 株主総会 取締役 監査役
(3) 株主総会 取締役 監査役 会計監査人
(4) 株主総会 取締役 会計参与
(5) 株主総会 取締役 監査役 会計参与
(6) 株主総会 取締役会 会計参与
(7) 株主総会 取締役会 監査役
(8) 株主総会 取締役会 監査役 会計参与
(9) 株主総会 取締役会 監査役 会計監査人
(10) 株主総会 取締役会 監査役 会計監査人 会計参与

取締役会を設置しないと、株主総会の権限が変わりますか。

会社に取締役会を設置しないと、株主総会の決議事項が拡大されるとともに、招集手続が簡略化されます。
具体的には、株主総会で会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項を決定することができるようになります。また、株主総会の招集も、取締役会設置会社では、総会の目的事項を記載した書面又は電磁的方法により、2週間前までに招集通知を出す必要がありますが、取締役会を設置しない会社では、1週間前(定款でさらに短縮できる)までに通知すればよく、総会の目的事項の記載は必要ありません。また、口頭による招集通知も可能になります。

取締役や監査役の任期はどうなりますか。

原則として、取締役の任期は2年、監査役の任期は4年ですが、株式譲渡制限会社では、定款でそれぞれ10年まで延ばすことができます。
なお、これまでの有限会社には、取締役・監査役の任期に定めがありませんでしたので、有限会社が新会社法の株式譲渡制限会社に移行する場合、役員の任期に注意する必要があります。

新会社法では、役員はどのような責任を負いますか。

取締役の会社に対する責任は、原則として過失責任となります。また、一定の場合に、役員の賠償責任額を制限することもできます。
取締役は、違法配当、利益供与、利益相反取引、法令・定款違反行為があった場合、他の役員と連帯して損害賠償責任を負います。前の3つについては、これまでは無過失責任とされていましたが、新会社法では、原則として過失責任となります。
なお、無過失の証明は取締役が行う必要があります。また、自ら利益供与や自己のための利益相反取引を行った取締役の責任は、無過失責任です。
次に、総株主の同意がある場合、役員の賠償責任の全部免除ができますし、法令・定款に違反した役員が善意・無重過失の場合、株主総会の特別決議により、 賠償責任額を制限することができます。さらに、社外取締役等については、責任限定契約をすることもできます。
役員が悪意又は重過失により、会社外の第三者に損害を与えた場合には、役員は損害賠償の責任を負います。この場合、責任の免除、制限はできません。

取締役会の決議方法は、どうなりますか。

定款に定めれば、実際に会議を開かずに、書面決議をすることができるようになります。この場合、取締役の全員が持ち回りの文書またはメールでその内容に同意し、監査役が異議を述べない場合に決議が成立します。
また、全ての取締役会を書面決議でできるわけでなく、3か月に1度以上要求される代表取締役の取締役会に対する業務執行状況報告は、実際に開催する必要があります。

便利になった株式制度

譲渡制限株式の制度は、どう変わりますか。

全ての株式でなく、一部の株式について譲渡制限することができるなど、柔軟な制度設計が可能となります。
その他にも、株主間の譲渡についてのみ承認を要しないこと、従業員等特定の者に対する譲渡については承認を要しないこと、譲渡を承認しない場合において先買権者をあらかじめ指定しておくこと、承認機関を株主総会とすることなどもできるようになります。

自己株式取得の方法は、どう変わりますか。

株式が市場取引されていない会社の自己株式取得は、その決議が定時株主総会に限定されず、臨時株主総会でも可能となります。また、譲渡人を指定しない方法も新設され、機動的な取得が行えるようになります。
特定の譲渡人を指定し、直接株式を取得する「相対取引」の場合、取得する株式の数、株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額、株式を取得することができる期間、譲渡人となる株主を株主総会の特別決議で取締役に授権する必要がありました。
譲渡人を指定せずに自己株式を取得する場合、取得する株式の数、株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額、株式を取得することができる期間を、株主総会の普通決議で授権すれば足ります。この場合、取締役の決議を経て、全株主に対して買い受け条件を通知し、これに応じた株主から自己株式を取得することができるようになります。
剰余金の分配可能額を超えて自己株式を取得できないことは、これまでと変化ありません。

相続等により、敵対する者に株式が分散することを防止できますか。

相続や合併によって株式を取得した者に対して、会社がその株式を売り渡すように請求できる旨を定款で定めることができます。
この制度を活用するためには、相続等があったことを知った日から1年以内に株主総会の特別決議を経る必要があり(請求期限)、剰余金分配可能額を超える買取はできないという制限(財源規制)があります。
また、売買価格は当事者間の協議によりますが、協議が調わない場合、申立により裁判所が決定します。この申立は、売り渡し請求から20日以内に行う必要があるので、注意が必要です。

必ず株式数に応じて議決権や配当を扱わなければなりませんか。

株式譲渡制限会社においては、株主総会の特殊決議により、議決権や配当について株主ごとに異なる取り扱いを定款に定めることができるようになります。
例えば、(1)議決権の行使について、頭数に応じ1人1議決権とする、(2)一定数以上の株式を有する株主について、議決権を制限する、(3)配当や残余財産の分配を株主の頭割りにする、などの定めもできることになります。

株券は必ず発行しなければなりませんか。

新会社法では、定款に株券発行の定めがない限り、株券は発行されないことになります。また、定款に株券を発行する旨の定めがある場合でも、株式譲渡制限会社は、株主から請求があるまでは株券を発行しないことができます。

新しい会計制度

新設される会計参与とは、どのような機関ですか。

取締役と共同して計算書類の作成・説明・開示等を行う機関です。税理士・公認会計士等の専門家に限られます。
会計参与の設置は完全に会社の任意ですが、大会社以外の株式譲渡制限会社が取締役会を設置する場合、会計参与を設置すれば監査役をおかないことができます。

株主への配当は、どのような場合にできますか。

これまで、利益の配当は、通常配当と中間配当の2回に限られていましたが、新会社法では、株主総会の決議によりいつでもできるようになります。このため、決算後の利益処分方法を示す「利益処分案(損失処理案)」の代わりに、剰余金の変動を示すものとして、「株主持分変動計算書」の作成が必要となります。
また、自社商品等で配当を行う「現物配当」が可能となります。ただし、この場合は原則として株主総会の特別決議が必要となります。
配当は、配当可能な剰余金の範囲でしか行えません。また、剰余金があっても、純資産額(貸借対照表上の「資本の部」の合計)が300万円未満の場合は、配当をすることができません。

最低資本金の撤廃

最低資本金の制度は、どうなりますか。

最低資本金制度が撤廃されたので、資本金が1円でも会社を設立することができます。
これまでに設立された、最低資本金規制特例制度を利用した「確認会社」は、5年以内に資本金を積み増す必要はなくなります(ただし、「増資できなかった場合は解散する」旨の定款の定めを変更する必要があります。)。 
また、既存の株式会社・有限会社も、無制限に資本金を減少させることが可能になります。

有限会社の今後

今ある有限会社を、新会社法施行後もそのまま残せますか。

特例有限会社制度により、新会社法施行後も、有限会社の商号をそのまま使用することが認められます。この場合、特に手続は必要なく、存続期間の制限もありません。
なお、特例有限会社は、会社法上は株式会社という扱いですので、最低資本金制度は撤廃され、これまで50人とされてきた社員の員数制限も廃止になります。また、社債の発行が可能になり、少人数私募債による資金調達もできるようになります。

今ある有限会社を、株式会社に移行するには、どうすればよいのですか。

株式会社へ商号を変更する旨の定款変更の株主総会決議、特例有限会社の解散登記、株式会社の設立登記を行う必要があります。
有限会社は、そのまま特例有限会社として存続させることで、(1)役員の任期に制限がないこと、(2)決算公告義務がないこと、(3)取引先に浸透した商号をそのまま使用でき、商号変更に伴うコストをかけなくてよいこと、などのメリットがあります。
一方で、新会社法上の株式譲渡制限株式会社に移行させることで、「株式会社」と名乗ることができるだけでなく、会計参与や会計監査人を設置することもでき、対外的な信用が向上することも期待できます。
株式会社への移行は、組織変更(会社類型の変更)ではなく、商号の変更ととらえられ、上記の手続が必要です。解散の登記には3万円、設立の登記には資本金額の0.15%(最低3万円)の登録免許税が必要です。